急性腸炎
(1)急性腸炎の原因
- 消化管内の胃壁をはじめ、膵臓からの各種の消化液などには殺菌作用があり、また小腸の蠕動運動は比較的早いので、健康人の小腸上部には細菌などは常住していないのがふつうです。
- しかし全身の抵抗力が弱まったときや、強力な細菌が進入した場合などには急性腸炎が起きます。
- 臨床的に急性腸炎として扱われるものとしては食中毒や伝染病などのような急性の感染症による者が最も多いです。
- 細菌では抗生剤の使いすぎなどにより、常住の腸内細菌がいなくなり、いわゆる菌交代現象を起こし、代わってかびなどの菌類、ことにカンジダの寄生によるモニリア症が起こったり、またふつうよりさらに毒素の強いブドウ球菌の感染が起こるなどの傾向が見られます。
- そのほか寝冷えなどのように、寒冷刺激によって一過性の機能性異常をきたし下痢をすることもあります。
- 特に老人などでは、腸の血管の動脈硬化性の異常などに基づく血液循環障害のため、激烈な腹痛、下痢、血便などの症状を呈する一種の急性腸炎を起こすことがあり、この場合は虚血性結膜炎と呼ばれています。
- 中年過ぎの人で、食後30分から1時間位してから腹痛が起こるときは、腹部血管の虚血性病変を疑って、精密検査を受けることをお勧めします。
(2)急性腸炎の予防
- 一般的に衛生的な注意を守り、とくに細菌に汚染された恐れのある生ものや、古くなった食物などはとらないようにすることが最も大切です。
- また睡眠中は体温調節機能も低下しているので、睡眠時にお腹を冷やさないことも予防の大事な一つです。
(3)急性腸炎の症状
- 超粘膜に細菌感染が起こると、炎症症状のほか局所を刺激して吐き気、嘔吐、腹痛、下痢が起こり、全身がだるくなって熱も出てきます。
- さらに細菌は血中にも移行して、いわゆる毒血症の症状が起こります。
- 一般に小腸上部二兆円が起こった場合、または胃炎をともなうなどの際は嘔吐が激しく起こり、サルモネラの場合は主として小腸を冒し、激しい下痢を起こします。
- また、赤痢菌は小腸を素通りして大腸を冒すので、粘血便をきたしやすくなります。
- 熱はあまり高くなりませんが、特に重症な例では、39〜40度ぐらいの高熱を出し、全身衰弱を起こすこともあります。
- 食中毒の原因は、その5分の3は原因不明のことが多く、細菌感染が5分の1で、残りの5分の1が化学物質による中毒です。
- 細菌感染のうち、腸炎ピブリオによるものが50〜75%と最も多く、ついでブドウ球菌、サルモネラなどの順となっています。
- 一般に発熱をともなう急激な悪心、嘔吐、腹痛、下痢などの胃腸症状があれば急性腸炎が疑わしく、それらの症状が、ほとんど時を同じくして起こる場合には、食中毒が極めて疑わしいといえます。
- 腸炎ピブリオ、サルモネラによる食中毒の場合は、菌が増殖してから発病するので潜伏期間は比較的長く、8〜24時間であり、主として下痢が起こってきます。
- ブドウ球菌、連鎖球菌、あるいは腸詰菌などは毒素を産出する菌です。
- したがって、細菌が増殖しなくても、とくにブドウ球菌などでは、すでに汚染された食品中にある毒素が吸収されるとともに症状が起こるので、潜伏期間は比較的短く、摂食後6時間くらいで主として嘔吐が起こるのが特徴です。
(4)必要な検査
- 糞便、吐物などから細菌の培養検査を行い、原因菌が何であるかを確定することが最も大切です。
- また、直腹鏡検査を行ったり、そのとき同時に組織を採取して、組織検査を行ったりすることによって、赤痢アメーバを証明したり、がんを鑑別したりすることが必要なこともあります。
- 虚血性腸炎が疑われるときには、選択的腹腔動脈撮影法などを行って診断しますが、そのほか、血球計算、血液電解質の測定なども行います。
(5)治療
- 嘔吐、腹痛、下痢などには対症療法を行います。
- そして原因に応じて、化学療法剤などを投与します。
- また症状に応じて、点滴、静注による補液、血液電解質の補正などのほか、ショックなどがあれば輸血したり、ステロイド剤などを投与することもあります。
(6)療養上の注意
- 患者はできるだけ安静を保ち、食事は悪心などがあるうちは半日から一日は絶食とし、治まれば白湯、番茶、次いで重湯、葛湯、半熟卵、おかゆ、トーストなど消化しやすいものから投与していきます。
- そしてなるべく経口的に、十分な水分を取ります。
- この際の目安としては1日の尿量がおよそ1000ml以上あるようにします。
- なお、果物やジュースはいずれの下剤作用があるので、下痢のあるうちは控えます。
- 腹痛に対しては、お腹を暖めるようにします。
- 一般に急性腸炎の予後は良く、数日で軽快します。
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